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コラム 2016.02.15

【後編】アンジが受けたBRCA遺伝子検査は日本で受けられるか?

日本でもBRCA遺伝子検査や予防的切除術は可能か?

アメリカをはじめ、欧米では病気が発症する前から将来の病気を予想して先手を打つという考えが強いと言われている。乳がんはもともと欧米で頻度の高い病気であり、患者のデータ収集や病気の研究が進んでいる。そして遺伝子が関連した乳がんを見つけるための検診や発症予防の制度が確立している。

さらにアメリカは民間の医療保険が主流である。そのため企業によっては遺伝による乳がん・卵巣がんの検査や予防的切除を保険適用としている。

一方で、日本では病気が発覚してから治療するという考えが一般的である。

日本人は国民皆保険であることから病気に対する考え方が受け身で、自分で積極的に病気の情報を集め、自ら治療法を選択するという考え方が弱い傾向がある。日本では乳がん患者のデータの蓄積がなく、人種の違いもありアメリカでの研究結果をそのまま日本人に当てはめて考えることはできない。また日本では予防にかかる費用は保険適用外になるため病気を発症していない時点での遺伝子検査や予防切除手術は自費になる。

日本での実施には多くの課題が残っている

日本で遺伝子検査を行ったり予防的切除術を行うことには多くの課題がある。

1つは費用の問題。予防目的は保険適用外になるため、検査だけでも20〜30万円程度かかってしまう。もちろん予防的切除も保険適用外となる。

2つ目に医学的な問題もある。アメリカでは予防的切除術が将来のがんリスクを減らすことが明らかになったことから、検査や予防的切除の制度が整っている。

しかし、BRCA遺伝子の異常がどの程度あるのかは人種によって異なるため、アメリカと日本を単純に比べることはできない。日本では日本人を対象としたデータが少なく、遺伝による乳がんのリスクが高い人に予防的切除を行うとリスクが減らせるという研究結果も出ていない。そのため病院や医師も積極的に手術を勧められないという背景がある。

日本でアンジェリーナと同じ決断をするためには高額な費用を準備して、予防的手術を引き受ける病院を探したりと数々のハードルがあるのだ。

遺伝子検査は新たながんの予防手段として普及していくか?

2014年から日本人の乳がん患者の情報を集め、研究する取り組みが始まった。

遺伝による乳がん・卵巣がんの知識普及のための医療者対象のセミナーや患者向けの講座など、啓蒙活動も実施されるようになってきている。さらに日本乳癌学会を中心に保険適用への取り組みや予防・治療の指針などが検討されつつある。

遺伝による乳がん・卵巣がんのリスクを知ることは検査の手段が1つ増えたにすぎないが、医学の進歩ががんを予防できることは望ましいことである。しかし、遺伝子検査はあくまで確率を示したもの。遺伝子検査だけで判断し、他の検査を受けずにいると見過ごされるがんがあるため注意が必要である。

アンジェリーナが予防的乳房・卵巣切除を行ったと発表したことに対し、専門家の中でも賛否両論の意見があったが、アンジェリーナの決断は、自分の将来のがんを予防する行動の1つとして認識され、多くの人に病気に対する考え方を見直すきっかけになったことは事実である。

前編「がんの予防的切除という決断」はこちらから

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