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検査解説 2016.03.17

【前編】従来型のがん検診の課題を克服!次世代がん検査を比較解説

【国内最低水準の価格】乳がんなど、遺伝性がん関連遺伝子検査
【国内最低水準の価格】乳がんなど、遺伝性がん関連遺伝子検査

従来型のがん検診よりも、早期にがんをスクリーニング

いまや「日本人の国民病」とも言われる“がん”。現在、日本人の2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで死亡している時代となった。一方で、がんの治療および診断方法も目覚ましく進歩している。国も、がん検診の受診率向上など、がんの早期発見・早期段階からの治療に向けたさまざまな取り組みを行っている。

だが、がん検診として実施されている内視鏡検査や便鮮血検査、腫瘍マーカーでは次のような課題がある。

  1. 早期がんでは感度が高くない(微細な早期がんを見逃してしまう)
  2. 身体的な負担がある(内視鏡はつらい、画像検査で放射線被爆してしまう)
  3. 検査に時間がかかる(準備含め、1-2時間拘束されてしまう)

臨床医やがんに不安を持った人が期待するのは、こういった課題を解決してくれる「次世代のがんの早期スクリーニング検査」である。

こうした期待を受け、血液を使ったがん検査法が登場してきた。早期のがんを視野に入れた、しかも分子レベル、遺伝子レベルの技術を駆使したがん検査で発見やリスク評価を行うことができるようになったのだ。ここでは、4種類の検査、①消化器がんマイクロアレイ血液検査、②CanTect(キャンテクト)、③Cologic(コロジック)、④PanaSee(パナシー)―を紹介する。

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左から、
①消化器がんマイクロアレイ血液検査=高い感度、4つの消化器がん、部位も特定
②CanTect(キャンテクト)=網羅的ながんリスク評価
③Cologic(コロジック)=高い感度、大腸がんに特化、手頃な価格
④PanaSee(パナシー)=高い感度、膵がんに特化、手頃な価格

これらはいずれも、簡便な血液検査であるため、画像診断の際の放射線被爆や強力な電磁波などの人体への影響の心配もない低侵襲な検査だ。また、内視鏡検査の際の前処置なども必要ない。ただし、検査は当然ながら保険適用外であるため、自費費用となる。そのため、まず自分がどの検査を受けたらよいか、各検査の特徴を知った上で選択するのがよいだろう。

消化器がんを感度9割以上で発見―消化器がんマイクロアレイ血液検査

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人間ドックなどの任意型のがん検診にも取り入れられている血液を使ったがんの検査として、腫瘍マーカー検査がある。これは、がん細胞が作り出すタンパク質などを測定することでがんの有無を判断するものだが、腫瘍マーカーはがんがある程度大きくなるまでは血中レベルでは差が出にくい。そのため現状では、がん診断の補助的な検査や治療の経過観察の検査として使用されている。

これに対し、消化器がんマイクロアレイ血液検査は、同じく血液を使ったがん検査の1つだが、消化器のがんを“遺伝子レベル”で判定する。mRNAという、DNAから発信されるメッセージを解析して「がん細胞が発生している信号が出ているか」を判定しているため、より早いタイミングでのスクリーニングができるのだ。

判定の対象は胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がん。これらの消化器がんを一度の検査で網羅的に、さらに部位ごとに判定できる。検査は1回の採血(5.0cc)のみだ。検査前の特殊な薬剤の投与などもない。検査結果は、「陽性」「陰性」で表わされる。

気になるのは検査の精度だが、これが感度[がん患者をがん患者と判定できる率]が98.5%、特異度[健常人を健常人と判定できる率]は92.9%と高精度である。陽性/陰性の判定は、金沢大学医薬保健研究域医学系恒常性制御学講座の金子周一教授らの研究グループが中心に行った研究データによるもので、末梢血における遺伝子発現パターンを解析することにより、消化器がんを高い精度でスクリーニングする。

検査費用は、78,000円~。血液を採取後、約2~3週間ほどで結果が出る(検査結果レポートサンプル参照)。

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「消化器がんマイクロアレイ血液検査」の検査結果レポートサンプル

ただ留意したいのは、同検査のみでがんを診断できるわけではない、ということだ。必ず、専門医による精密検査は必要である。がんが心配な方(血縁者にがんに罹患した人がいる)、既存の検査では見つけにくいがん(膵臓がんなど)を見つけたい、というような方に推奨される。

がん全般を網羅的にリスク評価「がん遺伝子検査CanTect(キャンテクト)」

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マイクロアレイ血液検査が消化器がんに特化した検査であるのに対し、CanTectは、網羅的ながんリスクを早期に評価する検査だ。ただし、部位は特定できない。そのため、特定のがん種に不安があるわけではない、あるいは消化器がん以外の部位にも不安がある方、がん家系の方に推奨される。

同検査では、がん細胞から血液中に遊離されるDNA、RNAなどの遺伝子を解析し、分子、細胞レベルの微細ながん細胞を検出し、存在リスクを評価する。

結果は、①「がんリスク評価」;リスク段階をA~Dの4段階に分けてリスクの傾向を提示、②「遺伝子発現解析」;がんの発症との関連が報告されている47遺伝子のmRNA(メッセンジャーRNA)の発現量を測定、③「Free DNA濃度」;Free DNA(血液中の細胞遊離DNA)は、がん患者では健常者と比べて濃度が増加することが知られている、④「突然変異解析」;がん発生に関与する遺伝子上での突然変異の有無をFree DNAを用いて検査、⑤「メチル化解析」;メチル化が検出されるとがん抑制遺伝子の機能低下が想定される、⑥「血液学的検査」;炎症・腫瘍、貧血・多血症などのスクリーニングとしての基本検査―で示される(検査結果レポートサンプル参照)。

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「CanTect(キャンテクト)」の検査結果レポートサンプル

前述したように、この検査の結果でリスク値が高かった場合、がんの疑いのある部位を特定することは出来ない。そのため、リスク値が高い場合には、画像診断などによる検査を経て、総合的な判断をする必要がある。また、CanTectは、先天的な遺伝子情報を調べるものではなく、あくまでも、生活習慣、生活環境、ストレス、加齢などの後天的要因で変化する「検査時点の後天的ながんリスク」を調べたものである。そのため、たとえリスク値が高かったとしても、生活習慣などを改善することにより、その数値を改善することは可能だ。よって、この検査を定期的に受けることにより、自分の体質や生活習慣にあった最適ながん予防管理や再発予防管理が可能となるといえる。

大腸がんと膵がんを手軽に早期評価「Cologic(コロジック)& PanaSee(パナシー)」

2015年4月に国立がん研究センターが発表した「2015年のがん罹患数、死亡数予測」では、がんの部位別で罹患数が最も多い(第1位)とされたのは、大腸がんであった。また女性の大腸がん発症率は、男性の2倍弱と多く、がんの部位別死亡率をみると、女性のがん死亡率の第1位が大腸がんとなっている。

また、膵がんは、罹患数は大腸がんほどではないが、自覚症状が乏しいため、早期診断がもっとも難しいがんである。発見された時にはすでに進行性で治癒が難しい場合が多い。

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これら、大腸がんと膵がんの早期評価を行えるのが、CologicとPanaSeeだ。いずれも、マイクロアレイ血液検査やCanTectと同様に、血液検査で行えるものだが、CologicとPanaSeeの価格はいずれも16,500円ほどと安価なのも魅力の1つといえる。ただし、マイクロアレイ血液検査のように、消化器がんを網羅的に検査するわけではなく、Cologicは大腸がんに、PanaSeeは膵がんに特化した検査となっている。また、これまで紹介した検査と同様に、確定診断は行えない。

リスク判定については、Cologicでは、大腸がん患者の90%の血中で減少していた新規の抗がん・抗炎症性の血中成分GTA-446の欠乏状態を検出して分析。感度は86%である。便の検体も必要ない。

またPanaSeeでは、膵がんに特異的な血中成分として同定されたPC-594の濃度を分析する。研究データでは、PC-594の濃度が健常対象者群と比べて低い場合、最大62倍も膵臓の発症リスクが上昇していることが示されているという。

なお、大腸がんは、わが国でも罹患率は高いものの、早期に発見すれば完治も可能である。一方で、大腸がんの確実なリスク因子として、肥満や喫煙・大量飲酒の習慣、赤味の肉や加工肉の過剰摂取、運動不足が挙げられている。また、「家族性大腸腺腫症」および「遺伝性非ポリポーシス性大腸がん」と呼ばれる大腸がんについては、親や兄弟など、直系の家族に大腸がんの人がいることもリスク因子となる。

自身の生活習慣などを振り返り、大腸がん発症のリスクが高いと思う場合には、便潜血検査とともに、Cologicも受けることで、より早期に発見出来る可能性は高くなるといえる。もちろん、Cologicの結果で高リスクだった場合には、大腸内視鏡検査を受けることが必要だ(検査結果レポートサンプル参照)。

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「Cologic(コロジック)」の検査結果レポートサンプル

また膵がん発症のリスク因子としては、大腸がんと同様に肥満や喫煙・大量飲酒の習慣が挙げられているほか、併存疾患として糖尿病、慢性膵炎、膵嚢胞がある人もハイリスク群となる。膵がん検診は、厚生労働省が定めるがん検診の中に含まれておらず、かつ早期発見が非常に困難なだけに、膵がんの心配がある人は、まずPanaSeeを受けてみる、というのも1つの方法だろう。

後編では、がんの有無を判断するのではなく、遺伝的にがんに罹患しやすいかどうかを評価する遺伝学的検査を紹介する。

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