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イノベーション 2016.08.23

【後編】ゲノム編集が可能にする医療の未来とは

ゲノム編集が医療の発展に貢献

様々な懸念があがる中、ゲノム編集の研究が活発になることに賛成する人の多くは、医療の分野において新たな治療方法の発見につながるのではないかと期待している。

ゲノム編集によって病気の治療も大きく進歩すると期待されている。例えば、すでにエイズの治療や予防への使用が進められている。エイズウイルスHIVが免疫細胞に感染するとき、細胞表面のある特定の受容体を足場に細胞内に侵入することがわかっている。もしこの受容体遺伝子を取り除くことができたら、免疫細胞の表面にこの受容体が出てくることがなくなり、HIVに感染しなくなる。

また、血液のがんである白血病の治療もゲノム編集によって研究が進んでいる。白血病は血液を作り出す骨髄の中で細胞ががん化する。このときがん細胞を攻撃するはずの免疫細胞の働きも低下しており、がん細胞はどんどん増殖する。この免疫細胞にある遺伝子を加えると働きが強くなり、がん細胞の増殖を止める効果があることがわかってきた。

すでにスイスの大手製薬会社ノバルティスは、2015年はじめにゲノム編集技術を持つベンチャー企業と提携し、研究開発を進めている。今後はさまざまながんに対する治療法の開発に取り組む方針である。

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ゲノム編集の未来

CRISPR/Cas9システムは世界にまたたく間に広がった。今もなお、様々な研究成果が現在進行形で発表されている。

例えば、2016年2月にイギリスでは、国が支援するプロジェクトでは初めて、人の受精卵のゲノム編集をともなう研究が正式に認可された。

しかし、遺伝子1か所の異常で生じる病気はほとんどなく、複数の遺伝子が組み合わさって発症している病気については現在どの部分を編集すればよいのかはわかっていない。よって、あらゆる病気への応用はまだまだ先のようである。そして、正しく遺伝子操作ができたとしても、その潜在的副作用までは未知であり、すぐに実用化できるものではない。

このCRISPR/Cas9システムは使い方によって人類に不幸を招きかねないと警鐘を鳴らす研究者がいることは事実だ。前述したように、受精卵にゲノム編集を行い、病気にならないようにするだけでなく、その子の知能や容姿を変えてしまう「デザイナーベイビー」の誕生も現実味を帯びてきた。また、テロ目的で感染力を高めたウイルスを作成しばらまくこともできるかもしれない。

不安と隣合わせではあるかもしれないが、流布に惑わされず、未来の医療を担うかもしれないゲノム編集に今後も注視していきたい。

前編「SFの世界が実現に?議論を呼ぶ『ゲノム編集』とは」はこちらから

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