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イノベーション 2016.02.17

ゲノム医療を牽引する若き実業家たち

Profile honkura
クオンタムバイオシステムズ株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)
本蔵俊彦氏
Profile uematsu
G-TAC株式会社 代表取締役社長
植松正太郎氏

人間の遺伝情報すべてを解読する国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」は2003年に完遂された。それから13年が経ち、医療や健康づくりが大きく変わったという実感はあるだろうか?正直、「そうでもない」と感じる方が多いだろう。ゲノム研究の成果が広く応用されるまで、もう一歩。次世代のゲノム医療を実現するために情熱を注ぐ2人の若き実業家が対面した。

シーケンサー市場をひっくり返す

Profile uematsu
はじめまして、G-TACの植松です。本蔵さんとは、置いている軸足は違うものの、将来的に実現したい方向性は同じかなと思っており、ぜひお話ししてみたかったんです。
Profile honkura
クオンタムバイオシステムズの本蔵です。たしかに長期的にはG-TACと弊社の事業は重なる部分があると思いますね。
Sub 1
Profile uematsu
まず本蔵さんが取り組まれている事業についてご説明いただけますか?
Profile honkura
我々は「究極の原理」に基づく革新的なDNA/RNAシーケンサーの開発に取り組んでいます。次世代のゲノム医療が発展していくためには、個人のゲノム情報をより早く、廉価に解読することのできるシーケンサーが不可欠です。現在はイルミナの第2世代シーケンサーがシェアの大部分を獲得し、1人のゲノムを1~数日・10万円ほどで読みとることができるようになりました。しかし、まだ改良の余地は十分に残されています。
Profile uematsu
イルミナがデファクトスタンダードというわけではないのですね。
Profile honkura
その通りです。実は既存のシーケンサーには原理的に「超えられない壁」があります。それはゲノムの塩基配列を読む前の試料調整や検出に酵素反応を利用していることです。酵素、すなわちタンパク質による反応は効率を上げることが難しく、大幅なコスト低下や小型化はしづらいというデメリットがあります。一方、我々が開発しているのは「クオンタムシーケンサー」というもので、第4世代のシーケンサーに位置付けられています。これは酵素反応を使わず、電気的に塩基の違いを読み取るという仕組みですので、実現すれば小型の装置で高速にゲノムを読むことができます。原価は100万円以下で非常に安く市場に出せます。
Profile uematsu
現在のシーケンサーは購入に数千万~億かかるので、そんなに安くて性能の良いものが発売されたらシーケンサー市場がひっくり返るくらいのインパクトがありますね。もう少し詳しく原理を教えていただけますか。
Profile honkura
塩基が1つしか通らないくらいごく微細な穴を空けておき、その穴の中に細長いDNAを通していきます。塩基はそれぞれ固有の電気的性質を持っていますので、通過した塩基の電気信号を読み取ることでどの塩基が通ったか同定することができます。それを続けると一続きの配列が決定できるという仕組みです。塩基をそのままの形で読んでいくので、酵素反応による修飾や増幅によるバイアスおよびノイズが入らず、精度の高い読み取りができます。しかし、技術的な難易度が極めて高いため、今までIBMやロシュなどがチャレンジしてきましたが、いまだに成功例はありません。
Profile uematsu
グローバルな大企業ができなかったことに挑む、まさにベンチャー魂ですね。
Profile honkura
難しいですが、理論的には実現可能。10年後には必ず完成しているはずです。問題は「どこが成功するか」ということ。ぜひ我々が成功させたいと思います。
Sub 2

ゲノム医療のプラットフォーム構築

Profile honkura
植松さん率いるG-TACは「Eとオミックス情報をフル活用し、パーソナル医療をリードする」ことをビジョンに掲げていますが、具体的にはどのような事業をしているのですか?
Profile uematsu
一言でいえば「ゲノム医療のプラットフォーム構築」です。今まで、大学発ベンチャーなどからシーズを発見するなどして、数十種類の遺伝子関連検査を取り扱い、医師をはじめとした医療従事者に提供してきました。また、2月15日からは一般の方々に向けた新たなサイトを立ち上げ、「パーソナル医療」に積極的な医療機関や医師を紹介するとともに、個人に適した医療サービスをマッチングするサービスを提供しようと思っています。
Profile honkura
G-TACは日本最大の医師会員をもつポータルサイトm3.comを運営するエムスリーの社内ベンチャーから独立したんですよね。メディカルというイメージが強くて、一般向けの印象はあまりなかったです。
Profile uematsu
エムスリーは「アスクドクターズ」という一般向けのQ&Aサイトも運営していますし、最近ではQLifeという一般向け医療総合サイトを子会社化しました。G-TACは医療従事者と一般の方々の両方を対象に、世界的にも類を見ない、ゲノム医療のプラットフォームを構築しようとしています。すでに約18,000人のG-TACメンバー医師を集め、パートナー施設も直近で50施設が見えてきたところです。
Profile honkura
プラットフォームの意義としては「教育」が一つのポイントになりますよね。
Profile uematsu
その通りです。一般の方々への教育はもちろん、医療者に対する教育も大事です。我々が医師4000人にアンケートを取った結果、8割はパーソナル医療関連検査に興味があると答えました。しかし、実際に実施したことがあるのは1割弱です。新しい検査なので、内容をしっかりご理解いただき、実臨床で活用していただくために、教育の機会を提供することが大事だと考え、これまでゲノム医学の講座や記事などによる情報提供を行ってきました。今後は一般の方々向けのサイトでもこれからの新しい医療に関する情報をお届けしたいと思っています。
Sub 3

次世代のゲノム医療を実現する環境づくり

Profile uematsu
お話を伺って、やはり本蔵さんの事業と我々G-TACは協業の可能性が高いように感じました。次世代のゲノム医療を実現する環境づくりとして、市場の適正化を図るという部分も似ていますよね。
Profile honkura
現在のシーケンサー市場はイルミナ一強で、健全な競争になっていないと指摘されています。我々の新たなシーケンサーを市場に投入することができれば、市場としてより適正な形になり、日常診療でゲノム情報を活用するためのコストは急激に下がるはずです。
Profile uematsu
我々が取り扱うパーソナル医療関連検査は、医療保険の枠内ではなく、人間ドックと同じ自由診療の枠内で実施されるものですから、医療機関により料金がまちまちです。検査を受ける側としては、納得できる価格とサービスを求めますよね。我々のプラットフォームで情報を提供することで市場適正化が図れると考えています。
Profile honkura
我々クオンタムバイオシステムズが精度の高い廉価なシーケンサーを投入し、必要なときにいつでもゲノム情報を調べられるようにする環境を提供し、植松さんたちG-TACがゲノム情報を適切に応用するための教育とゲノム医療にアプローチしやすくする環境を整備する、ということですね。
Profile uematsu
本蔵さんは2013年1月、我々は2015年8月に起業したばかりです。理想は大きく、双方でゲノム医療を推進する力になれるといいですね。
Profile honkura
そうですね。今後もよろしくお願いします。
Profile uematsu
こちらこそ。本日はありがとうございました。

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