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イノベーション 2016.05.20

【前編】若手起業家鼎談―どう変わる?ゲノムがもたらすイノベーション

Profile honkura
クオンタムバイオシステムズ株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)
本蔵俊彦氏

1974年東京生まれ。東京大学大学院修了後ヒトゲノム解析等の研究に従事。バイオセクターの証券アナリストを経て、05年にマッキンゼーに入社、製薬会社を中心とした戦略立案に従事。11年に産業革新機構に移り、ディレクターとしてライフサイエンス領域を担当した後、2013年に同社を設立。現在は日米双方を開発拠点とし、革新的DNAシーケンサーの開発に挑む。米国コロンビア大学にてMBA取得。

Profile ishikura
株式会社日本医療機器開発機構 取締役 CBO
石倉大樹氏

1982年福岡県生まれ。九州大学農学部在学時に、医学部発の大学発創薬ベンチャー・アキュメンバイオファーマ創業に参画。日本で初めて大学発の技術を事業化した会社として上市(欧州)に成功。日本と米フィラデルフィアで資金調達や経営企画に従事、さらにエムスリーで医療分野の新規サービス開発に従事した後、米スタンフォード大学経営大学院留学。現P5,Inc.取締役。平成27年度東京大学大学院薬学系研究科非常勤講師。

Profile uematsu
G-TAC株式会社 代表取締役社長
植松正太郎氏

1984年栃木県生まれ。社内アントレプレナー。学習院大学卒業後、SBIホールディングスに入社。2C・2B向け営業、店舗開発、経営企画、マーケティング、新規事業、人事など幅広いプロジェクトに従事。2011年にエムスリー入社。製薬企業向けのマーケティング支援業務において、Web講演会事業やMR向けの営業支援アプリ開発など、新規事業を複数立ち上げ。2015年8月にゲノムを活用した医療業界の構造変革を目指しG-TAC社を設立、20,000人の医師ネットワークを背景としたゲノム医療のプラットフォームを運営している。

次世代シーケンサーの登場および医療技術の進歩により、より高速かつ低コストのゲノム解読が可能となった今、ゲノム情報は私たちの生活に身近なものになりつつある。その可能性は、医療だけにとどまらず、さまざまな分野での応用が期待される。では、日本の医療、また私たちの生活は今後どのように変わり得るのだろうか―。3人の若き実業家が集い、ゲノム研究の応用の今とこれからを考察する。

Sub 1

シーケンサー市場をひっくり返す

Profile uematsu
G-TACの植松です。本日はよろしくお願いいたします。本蔵さんには以前に対談記事、石倉さんにはG-TACのアドバイザーとしてもご協力をいただいています。あらためてそれぞれまず簡単に、自己紹介をお願いできますでしょうか。
Profile honkura
クオンタムバイオシステムズの本蔵です。DNAシーケンサーを作る会社を2013年1月に設立しました。このDNAシーケンサーの特徴は、日本が得意とする半導体の技術を使って、格安で、かつ既存のものを性能で凌駕するようなもの、というところです。現在、従業員は30人くらいですが、半分は日本、半分は米国というハイブリッド型の組織を作り、開発スピードを高め、かつ経験者を積極的に雇用しながら、開発をしています。
Profile ishikura
日本医療機器開発機構の石倉です。医療機器のインキュベーション事業をやっています。最近は、米国では医療機器になる臨床検査の分野を積極的に増やしていこうということで、ハンズオンスタイルでの起業支援を行っています。
Profile uematsu
いまの事業に携わるようになったきっかけみたいなものはありますか?
Profile honkura
高校や大学など、自分の進路を考えますよね。その時に、「どうせやるのであれば、この時代だからこその一番わくわくする、面白いことに携わりたい」と考えた時に、遺伝子関連に関わること、当時は研究に関わることが一番面白いと考えました。で、最初は東大でゲノムを勉強しました。ただ、一人の研究者が実際に社会に大きなインパクトを与えるのは難しい。事業や製品になって初めて本当の意味でインパクトがあると思ったので、少し軸足を変えて、ビジネスの立場から、ライフサイエンスにインパクトがあることが出来ないかと…。そこで立ち位置を変えて、証券会社のバイオベンチャーのアナリスト、ヘルスケアのコンサルティング、バイオベンチャーの育成などを仕事とし、そうこうしている間に、もともと自分が携わっていたゲノム研究で大阪大学にエキサイティングな結果があるということが分かり、いろいろ話をしてみたら、意気投合しまして。それまではサポートしたり、評価したりといった仕事でしたが、自分で主体的にインパクトがあることに携われるチャンスだったので、「これはやるしかない」ということで一歩踏み出して起業した、というのがきっかけというか経緯ですね。
Profile ishikura
私は以前エムスリーで3年間ほど、IT系の新規事業開発を担当していて、医療情報を軸にした新しいイノベーションを作っていきたいと思っていました。医療情報というと枠が広いのですが、そのなかで重要な軸足の1つを握っているのがゲノム情報だと思っています。その後、2013年までシリコンバレーにいたのですが、ゲノム情報を使ってどういうビジネスができるかを考えたときに、最終的にいろいろな事業の機会を広く取っていけるようなかたちとして、医療機器のインキュベーションがありました。ゲノム情報を製品にしようとすると、やはり薬事承認や保険償還は必要不可欠な要件なので、臨床現場と一緒に医療機器をちゃんと社会実装していくというところを大事にしたいな、と思い、こういう事業をやっています。
Profile uematsu
ゲノムには、どういうオポチュニティがあると思われますか?
Profile honkura
ゲノム情報は、医療以外にも使える可能性があるからこそ、インパクトがあると思っています。例えば、米国のターゲットという大きなショップモールが今やろうとしているのが、大量のリンゴの品質や糖分などのデータを取り、消費者が分かるかたちでデータを活用していくという試みをやっています。これは一見、彼らのビジネスを破壊するようにみえるのですが、差別化にもつながるので、やっているわけです。DNAシーケンサーもそうした用途に使える可能性があるわけですが、鍵は「価格」です。価格がもっと下がってくれば、あらゆるものの遺伝子データを繰り返し検査することができます。例えば、神戸牛のブランドを保護したい畜産組合であれば、自分たちの種牛のデータベースを作っておいて、抜き打ち検査をすることで自分たちのブランドを保護することもできます。
Profile ishikura
米国では、農業はけっこう動いていますよね。ワインの品質、醸成具合を見たり、土壌の微生物の育ち具合を見て、その具合で土地の値段が決まるとか。
Profile uematsu
そんな世界なのですか!
Sub 2

今熱いのは腸内細菌?!

Profile honkura
現在、医療の分野では個別化が進んでいますが、個別化医療ができるならば、個別化食品もできるわけで、“個別化”と付いたいろいろなサービスが出来るようになるわけです。例えば、腸内の細菌を毎日モニターして、「あなたの今の腸内細菌に合ったような『個別化ヨーグルト』を届けます」とかね。また日本は恵まれた環境にあると思うのは、味噌やヨーグルトなどの国内メーカーは菌を大量に保有していて、それらの菌が身体にどのように良いかをずっと研究しています。その情報の蓄積にゲノム情報が加わって、食品と健康がうまく組み合わさったようなビジネスが出てくるのではないかと思います。
Profile ishikura
私がいま、がんともう1つ見ているのが、腸内細菌です。がん領域も以前は診療科が臓器別に分かれていたと思いますが、今は、腫瘍内科、腫瘍外科ができているように、今後は「腸内細菌科」という診療科が遅かれ早かれ出来るのではないかと思っています。腸内細菌は、健康管理も含めて、最初のスクリーニングで見ていくものになると思いますし、本蔵さんもおっしゃっているように、日本の食生活のカルチャーとかなり紐付いているところがあるので、ここから新しいイノベーションを作っていけるのではないかと思いますよ。
Profile honkura
面白いですよね。「個別化納豆」とかも出来ますよ(笑)。これって、医療で出来たことを食品に応用するというよりは、もともと食品で分かっていることであり、今は大きな製薬会社が腸内細菌の分析を専門とするベンチャーと提携するような動きもあります。食品と医療の垣根がだんだん低くなってくるのではないかと。ただ大事なことは、効果などを消費者が正しく理解する、ということです。
Sub 3
Profile ishikura
そういう意味で、G-TACさんがまさにやられている、専門家を通して解説をするというコミュニティを作られているのは、すごく重要だと思います。最近はそれを遠隔医療でもやられようとしているとか?
Profile uematsu
そうなのです、遠隔医療というとさまざまなサービスが立ちあがっていますが、われわれは、臨床遺伝専門医というゲノムの専門家みたいな人たちにフォーカスしています(プレスリリースはこちら)。臨床遺伝専門医って、日本に1,000人くらいしかいなくて、多くが大学病院や研究機関にお勤めの先生方なので、一般の方たちがなかなかアクセスできないのです。その人たちに対して、よりアクセスしていただきたい、というところから、遠隔医療という概念を入れて、ゲノム医療の一端みたいなものを広げようとしています。

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